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斉藤円華の「週末自動車ライター事始め」・第4回
 
「年末年始錆取り大作戦! 粉塵まみれの夜空に除夜の鐘が鳴り響く」
 
 
−旧車の悩み、それは錆−
 
 エンスー車、それも80年台初頭までの旧車にお乗りの方々にとって何が一番悩ましいかと言って、それはやはり錆なのではないだろうか?
 亜鉛メッキを施した、自動車用の防錆鋼板が使われだしたのは70年代と言われる。国産車に普及し始めたのが80年代。そんなに昔の話じゃない。でもなぜそれまで使われなかったのか?
 私が知る限りでは、こういうことらしい。普及当初はプレス金型と防錆鋼板の相性が悪かったことと(鋼板の技術革新で克服)、もう一つは、整備工場などで聞いた話によれば、当時の自動車塗料は亜鉛鋼板に対して剥がれ易かったから(塗装方法および塗料の改良で克服)。
 確かに、70年代〜80年代初頭の旧車はよく錆びる。先日都内で見かけたトヨタ・タウンエースワゴン(初代)はAピラーがもう惚れ惚れするくらいの錆加減だった。解体屋に積んである廃車で錆びているのは決まってその当時に製造された車だ。そして私の117も79年製。主にフェンダーやリアアンダーパネルで、錆が拡大しているのである。この部分は水抜けが悪い。ハンマーの柄でコンコン叩くと錆がぱらぱら降ってきて、何だかコーンフレークを連想させて唾が出る。
 
 
−見積もりに一念発起 自分で鈑金を決意−
 
 日を追うごとに成長する錆…。旧車を錆から守るコツ、それは毎日走らせることだ。風に当てることで溜まった水分を飛ばすのである。また、ちゃんと機関を運転することで全体のコンディションも維持される。
 しかし、自転車通勤でクルマには週末しか乗らない私にとってそれは面倒だ。いいさ、今日くらい乗らなくたって。だがその積み重ねで、錆は大きくなるのだ。
 鷹揚に構えていた私だったが、いよいよ錆が目立ってきて不安になったので、懇意にしている工場に見積もりをお願いした。ボンネット前縁、左右リアフェンダー、リアアンダーパネル。錆はボディ全体の各所にわたり発生していたが、進行の激しい部分に限定した。約35万円。高いか、安いか。
 鉄板に穴が開くような激しい錆の場合、通常のパテによる作業では短期間で錆が再発しやすい。よほど密閉に注意しないと、同じところから再び錆びてくる。塗装とパテの下で錆が膨張して、あるときポロポロと塗装を破って出てくるのである。この場合は病巣を除去して鉄板を切り継ぐ作業が必要だ。こんかい、この工程が反映されている分金額が高くなっているのである。これで悩みから解放されるなら…。でも35万円という額は、私には大きな出費だ。パテによる鈑金なら2年はもつだろうか。ならば今回はパテで安く仕上げて、本格修理はお金を貯めてからにしよう。
 そんな折、東京・町田にある「安野鈑金」という自動車鈑金店は、自分で鈑金するエンスーを手助けしてくれるという話を思い出した。材料を分けてもらって、ノウハウを教えてもらえば自分で出来るし、だいいち安く上がるかも…。「よっしゃ! 年末年始の休みを使って鈑金やってみっか!」
 
 
−寒空の下 大きな錆穴−
 
 そうと決まれば行動だ。連絡を取り、年の瀬の週末、早速117で安野鈑金に赴いた。
 「ご自分でなさるんですか! わかりました。材料、手配しときましょう」。数日後、材料を受け取りにいったのだが、その一覧がこれだ。

手前左から:
練りべら、刷毛、マジックヤスリパッド(平面用)、同(曲面用)、パテ練り用定盤(2ミリ厚アルミ板)、マスキングテープ
中央左から:
ディスクグラインダー用サンドペーパー、マジックヤスリ(60番、下地パテ研ぎ用)、同(150番、中間パテ研ぎ用)、水ペーパー(800番、サフェーサー研ぎ用)、同(1500番、仕上げ用)
奥左から:
テロソン『錆封じ』(防錆剤)、下地パテと硬化剤、中間パテと硬化剤、洗い用シンナー


 30日から作業を開始。車をジャッキアップし、ディスクグラインダーで錆を落としていく。騒音がかなりするので、正月三が日に使ってはご近所に迷惑になってしまう。その前に作業をすすめる必要があるのだ。

 病巣を切除していくが、面積は大きくなりそうだ。グラインダーに装着したヤスリもみるみる減っていく。錆を削る際に粉や崩れたパテの破片がびしびし当たるので、目を守るゴーグルが欠かせない。奮闘するうちに大きな穴が現れた。

 錆落としが終わったので、傷口に『錆封じ』を塗っていく。透明で薄く茶色を帯びた液体だ。作業を早めたくて、乾かすためにドライヤーを当ててみたが風量が全く足りないのですぐやめた。
 
 1時間ほど置いてからパテ付け開始。下地・中間パテともに基剤にたいして硬化剤を2%混ぜる。玉子大の基剤に硬化剤はパチンコ大が目安、と安野さんに教わったのでその通りにする。定盤は東急ハンズで買ってきたのだが、鉄だと重くて錆びるし、薄いと曲がって作業できない。厚みのあるアルミ板を選んだのは正解だった。混ぜ合わせたものを患部に塗っていく。ここまでで一日の作業は終わり。一晩置いてパテの硬化を待つ。
 
 翌日、大晦日。昨日盛ったパテをマジックヤスリで研いで行く。粉塵がものすごい! 吸引すると有毒だ。顔にタオルを巻いて作業したが、本当なら防塵マスクが必要だろう。パッドを使うことで平面がきちっと出るが、うまく曲面を出すには集中力が必要だ。研ぎの様子の画像がないのは集中しすぎて撮影し忘れてしまったからである。
 さて大体のところで作業は切り上げ、自宅の大掃除や年越しそばなど、新年を迎える準備をした。夜中、粉塵まみれの疲れ切った身体を風呂の湯で癒していると、遠くから除夜の鐘が聞こえる。最後まで慌しかった一年が過ぎてゆく。
 新年は2日から作業再開。寒空の下での作業はテンションがどうしても下がる。そこで、オジサン世代には懐かしいラジオ「クーガ7」をお供に引っ張り出した。「J-WAVE」にダイヤルを合わせる。
 
 この日の作業は、研いで面を出した下地パテの上に中間パテを入れていく。下地パテは肌理が粗く、気泡が入るのでその上に塗装は出来ない。穴を塞ぐには適さないが滑らかな表面を作る事の出来る中間パテは鈑金には欠かせない。このパテの質感が洋菓子のクリームを連想させ、何だか美味しそうで困った。
 
 そうして作業している時、不意に新たな錆を発見! リアフェンダーのサイドリフレクター部分、ここは水はけが悪くて117の錆の弱点なのだ。何で見落としたのか。もう一度、グラインダーを引っ張り出さなきゃ…。本当に鈑金なんて自分に出来るのか。弱気になったところに雨まで降り出した。翌日以降の天候の回復を待って、作業終了。
 
 結局4日になって、テールレンズやバンパーを外して錆を落とし、新たにパテを入れなおしたのちにサフェーサー(下地塗料)を吹き付けたのである。全ての作業が終わったのは夜遅くになってから。何とか、本塗装の一歩手前まで辿り着いた。ゴールまでもう半分だ。(つづく)
 
 

[執筆者プロフィール]
斉藤 円華(さいとう・まどか)…週末自動車ライター。117の鈑金作業は、本塗装でトラブル発生?! 今後の展開に目が離せません。乞うご期待。
※ブログ “mdk-on-line” http://mdk-on-line.jugem.jp/
※ mixi(ミクシィ)にもプロフィールがあります。どうぞご覧下さい。

【次回予告】
厳しい寒さの緩んだ1月最後の日曜、東京・お台場で開催された新春恒例の旧車イベント「JCCA CLASSIC CAR FESTIVAL NEW YEAR MEETING 2006」を取材。 次回「お台場に旧車集結、今年の合言葉は『スロー・カー・ライフ!』」をお楽しみに!